子供のころに不思議な体験をしました。
あれはなんだったんだろう?
とても不思議で、とても怖い思い出。
この記事の最後の一行の意味は未だに不明のまま私のトラウマになっています。
薄暗い部屋
私は小学生のころ、両親と同じ部屋で寝ていました。
タタミの部屋に布団を敷いて寝る、ありふれた昭和の風景です。ちびまる子ちゃんやサザエさんでよく見る光景ですね。
家屋の北側にある寝室は、北側の壁に窓がありました。
部屋も窓も北側なので日が差しません。昼間でも薄暗いその寝室は、少し怖い印象がありました。
何かが出るわけじゃないけど、昼間でも薄暗い部屋は、なんとなく嫌な雰囲気があります。
父親とのスキンシップ
寝るとき以外は不気味な雰囲気がある部屋でした。
でも寝るときは別です。
父親と一緒に布団を敷くが楽しかったのです。
普段は一緒に遊ぶことがなかった父ですが、仲が悪かったわけではありません。遊ぶタイミングが無かっただけでした。
父と二人で布団を敷くときだけは、よくふざけあって遊んでいました。あれなんでしょうね?修学旅行でも布団を敷くとテンションあがりますよね?あんな感じです。
布団で、す巻にされたりして、キャッキャ言いながら布団を敷くのは、父との貴重なスキンシップの時間でした。
父の事が好きだったので、それはとても幸せで、楽しい時間でした。
父はもう他界しましたが、このときの楽しかった思い出はずっと忘れないでしょう。
なぜか目が覚めた
ある日の夜、いや、明け方だったかもしれません。
眠りについてから、随分と時間がたっていたと思います。
子供のころの私は、一度眠ると朝まで起きなかったのですが、何故かその日は朝になる前に目が覚めました。
静かな部屋。
隣の布団では両親が静かに寝息をたてています。
いつもなら母と父が先に起きるので、二人が寝ているのは見慣れない、珍しい光景でした。
でも、それよりも…
…
いや、目は覚めたんだけど。
目は薄目にしていました。
両親が寝ている姿を薄目で見ていました。
目を開かないように、布団から出ないように、寝たフリをしながら、ピクリとも動かないように注意しながら。
注意しながら…
目を開いたら、少しでも動いたら、自分が起きていることがバレてしまうから…
寝ている両親の向こう側にいるアレに。
明るい
両親の向こう側にあるのは、部屋の北側の壁です。
日の光が差さない窓がある、いつも薄暗い壁。
でも、私が目を覚ましたときは、薄暗い壁ではなかった。
なぜかその壁が白く光っていた。
壁全体が、壁だけが、激しく白く光っていました。
私はその光の眩しさに目が覚めたのです。
その光は、生きているような、意志があるような気がしました。
目が覚めたことがバレたら、目撃したことが知られたら、襲われるような気がして怖くなりました。
そこには『何かがいる』気配がしました。
幸い、両親はその光に気付いていないようでした。ぐっすり眠っていてピクリとも動きません。
私は『あの光りは見てはいけない』と思い、そっと目を閉じてじっとしていました。
まぶたを閉じても光が眩しかったけれど、ギュッと目を閉じると起きていることがバレるかもしれない。だから、そっと目を閉じたまま我慢していました。
『気付かれませんように…』
そう念じながら目を閉じてじっとしていると眠くなってきました。そしてふたたび眠りにつき、気付いたときにはいつもと変わらない朝になっていました。
…
光のことは怖くて誰にも話せませんでした。
あの光りはなんだったんだろう…
音もなく、静かに光っているだけでしたが、ありえない光景だったので例えようのない恐怖を感じました。
その日以来、怖いけど北側の壁をじっと見つめて、あれが何だったのか考えるようになりました。
答えは出せなかったけれど…
ピクリとも…
不思議な光は二度と見ることはありませんでした。
日が経つにつれて、あれは夢だったのではないかと思うようになりました。寝ぼけていたのかな、と。
それから数ヶ月後、もう誰かに話しても大丈夫と思えるくらい気持ちが落ち着いたある日のこと。
いつものように父と二人でふざけっこをしながら布団を敷いていました。
父と遊びながら布団を敷いていました。
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が、なぜか父の動きが突然止まった。
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少しのあいだ、父は何か考えていた。
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何を思ったのか、敷いていたシーツを手に取り
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その真っ白なシーツを両手いっぱいに広げて
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北側の壁の前に立った…
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白い壁を作り、黙って立つ父。
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私はあのときの恐怖が蘇ってきました。『父さん。なぜそれを…』と思った瞬間、当時、両親がピクリとも動かず静かに寝息をたてていた意味を理解しました。
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そして父は静かに言いました…
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「なあ、夜中にこんなのがいたらどうする?」