読書感想

村山早紀:著『かなりや荘浪漫』は漫画の魅力が活字で伝わる不思議で優しい物語

投稿日:2015年12月13日 更新日:

村山早紀さんの著書『かなりや荘浪漫 星めざす翼』を読みました。この本は1巻の『かなりや荘 浪漫 廃園の鳥たち』に続くお話です。

この作品は、ある天才漫画家の誕生とその成長を、取り巻くひとびとの人間模様を交えてえがいた作品です。

漫画家の物語といえば『バクマン。』をイメージする人もいると思いますが、この作品は雰囲気がまったく違います。著者独特の優しさにあふれた、とても柔らかいタッチのお話です。

今回は本書を読んで感じたことなど書いてみます。

相変わらずストーリーに直結する内容は書いてません…

絵が上手いだけでは漫画家にはなれない

本書の主人公(茜音・あかね)は、絵が素晴らしく上手い少女です。スケッチブックに描かれた漫画も凄く上手い、ストーリーも良い。誰からも愛される優しい心も持っています。謙虚さゆえか、自分は絵が下手だと思っています。

でもそれでは漫画家にはなれないんですね。

自分の実力がわからない
読ませる技法をしらない

このような人は実際にいそうです。そして、このような人はきっと誰にも知られずに日の目を見ることなく埋もれていくんでしょう。そこで必要になるのが編集者です。才能を引き出し、開花させる戦友ですね。

物語では凄腕の編集者(美月・みづき)が登場します。

天才的な絵が描ける茜音と編集者の美月が出会うきっかけが実に素敵です。運命的な出会いは偶然のようで実は必然だったりすることが現実にもあります。

運も実力のうち。

絵が上手いだけでは漫画家にはなれない。けれど運命的な出会いがあれば、実力を開花させることができる。その運は自分で作り出せるものだということを本書は教えてくれます。

漫画は作者ひとりで描くものではない

本書は漫画家(茜音)が主人公の物語ですが、編集者(美月)の描写も細かく書かれています。

美月の編集者としての葛藤のストーリーはおもしろいです。普通、漫画の読者には編集者の胸の内はわかりません。漫画を読んでいるときは、そんな人がいることすら意識しません。

漫画の中に編集者をキャラクターとして登場させるケース(Dr.スランプアラレちゃんのDr.マシリトなど)もありますが、そうでもなければ編集者の存在は意識しないものです。でも、いるんですよね。必ず。

漫画って、漫画家と編集者の二人三脚で作られるんですね。美月はとても人間臭く、心が弱い、でも志は強く、素晴らしい作品を世の中の人に読んで欲しい。そんな想いが強い人です。美月が、まだ磨かれてない原石の茜音とともに漫画を作り上げて行く様子はワクワクします。

ネットの影響

出版業界が苦しい。

かつて時間の隙間を埋めていた本は、スマホの普及により、SNSやネット閲覧、ゲームにその時間を奪われています。

しかしその一方で、ツイッターによる情報の共有・拡散の影響で読まれる本もあります。

本書では新雑誌の企画会議のシーンでこのような現在のネットのチカラを使った本の普及を言及しています。

良い本は売れる。

これは確かなことだと思います。今は販売チャンネルの転換期なのかもしれません。

漫画を作る編集者たちの挑戦はリアルの世界でも目を離せない、客観的に見たら実におもしろい展開になりつつありますね。当事者は死活問題なんだろうけど…

そういえば、著者の村山早紀さんともツイッターがきっかけで繋がりました。それ以来、何冊も読ませていただいてるので、ツイッターも上手に使えば本が売れることを体験してますね。

漫画の良さを語るには漫画よりも活字の方が向いている

本書で書かれている漫画、特にその絵の素晴らしさの表現がおもしろいです。

絵を見たときに、その絵のどこをどのように見るのかは、見る人が決めてしまいます。これでは背景に描かれた細やかな描写を見過ごしてしまうこともあります。

その描写の凄さを活字で表す場合、細部にわたる作者の意志を文字で教えてくれます。これなら大切なポイントを見逃すことがありません。

絵はないけど見逃さない。

活字で絵の良さを語るのは、絵を見せるだけよりも親切でわかりやすいと感じました。

1巻の『廃園の鳥たち』で、美月が茜音の天才的な絵を見た時の感動の描写が素晴らしいです。活字を読んでいるのに、その絵の情景が目に浮かびます。読んでいてワクワクします。

ときおり編集者らしい厳しい指摘をしながらも、その絵の素晴らしさを認めざるを得ない。そんな美月の感動が伝わってきます。

いや、もうね。読んで!

さいごに

漫画好き(特に描く方に興味がある人)にはワクワクするシーンが随所にあります。勉強にもなると思います。

漫画を読むのが好きな人も、絵を見る目が変わったり、絵の見かたが変わったり、雑誌の編集後記がおもしろくなったりと、いろいろな変化が楽しめそうです。

物語を取り巻く人(と幽霊)たちも個性豊かで、また、その人たちの描写も細かい。よくもここまで人々の細部を書き出せるなぁと、本を閉じて感心します。そんな作品を次々と生む著者の天才ぶりも誰か本にしてくれないかなと思います。

週刊少年ジャンプ編集長も推薦する『かなりや荘 浪漫』

私も推薦しちゃいます。3巻が早く読みたいです!

読んだあとは著者の村山早紀さん(@nekoko24)にツイッターで感想伝えると喜んでいただけると思います。とっても気さくで優しい方です。

著者と繋がれるって、凄くない?

他の人の書評も参考にどうぞ。

かなりや荘浪漫 廃園の鳥たち 感想 村山 早紀 – 読書メーター

かなりや荘浪漫 星めざす翼 感想 村山 早紀 – 読書メーター

それではまた〜

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ケンちです。約20年ほど写真業界にいました。いまはIT系企業で主にITとは関係ない仕事をしている普通の人です。Twitterによく出没しています。