前回はモノクロの写真をアップしました。今回はモノクロ写真の加工の過程と、なぜモノクロにしたのか(するのか)などを書いてみます。
これからモノクロにチャレンジする人の参考になれば。
関連記事:働くひとたちをモノクロ写真で撮ってみた
モノクロ(白黒)にした理由
モノクロ写真は味があっていいです。でも意味のない味付けは素材を台無しにしかねません。なぜその味付けをするのか考えると写真の楽しみも広がります。
今回モノクロにした意味(コンセプト)を説明してみます。
被写体は以下の二点です。
- 昭和の飛行機
- 労働者
状況は飛行機の清掃作業です。
昭和の飛行機ということで、歴史観(ちょっと古い感じ)を演出してみたいと思いました。昔の飛行機なので重厚感のある造りと鉄のツギハギが目立ちます。この昔の飛行機独特の雰囲気を強調するためには、色や中間的な階調を取り除き、無骨な表現が似合うかなと。
清掃作業をする労働者は、社会の陰で黙々と頑張る人を連想しました。カラフルな明るいイメージではありません。かといって暗い仕事とも思いません。静かに、実直に作業をする姿はシルエットで表現した方が余計な雑音がなくて良いかなと。
ということで、色は排除。かつ、階調は固く、人物はシルエットで。こんな具合に方向性を決めました。
白黒加工に使ったアプリ
今回の画像編集には『Adobe Photoshop Express』(PS Express)を使いました。スマホでも本格的な編集ができて便利です。ブログにアップする画像はいつもこのアプリで加工します。紙焼きするならパソコンで加工しますが、ブログは手軽に使いたいので。
PS Expressの使い方は、のぶ (@designlikes11)さんのブログで紹介されています。興味のある人はこちら↓
スマホの写真をきれいに補正加工する「PS Express 」アプリの使い方! | のぶログらいくす
モノクロの加工手順
ひとつの写真を例に加工の仕方、というか目的到達までの着眼点を説明します。この辺は好みもありますが、あくまでも私のコンセプトです。
まずはオリジナルのカラー写真がこちら↓
この写真を見たときに、どこに意識が向きますか?視線じゃなくて意識ね。
なんとなく作業員を見て「掃除してる」状況を判断すると思います。飛行機はどうでしょう。重厚感にちょっと欠けますよね。色の階調が弱いのでメリハリがありません。というか色味が見どころではないので色は必要ないですね。カラフルじゃないし。
ということでまずは白黒に変換します。
白黒に変換した結果↓
余計な色がなくなってスッキリしました。でも階調はそのままなのでやっぱり飛行機が弱いです。色がなくなったせいで飛行機の存在が薄れてしまいました。こうなると作業員にしか意識が行かないです。白黒のメリハリを上げれば飛行機も目立つかな。
今度はコントラストを上げてみます。
コントラストを上げた結果↓
コントラストを上げると、暗部がより黒く、明るいところはより白くなります。垂直尾翼のリベット(丸いボツボツ)や鉄板の継ぎ目が目立ちましたが、機体の質感に重厚感がありません。明るい部分も白く飛んでしまいました。
さらにコントラストを上げてみるとどうなるでしょう↓
垂直尾翼の左側は像がハッキリと出てきました。しかし白飛びもひどくなってしまいました。
コントラストを上げただけでは質感の演出が難しいですね。飛行機の重厚感を演出するために白飛びは抑えたいです。
そこで PS Expressの「明瞭」を使います。「明瞭」は明暗の調子を変えることで輪郭部分の強調ができます。明暗に対して均等に強弱を加えるコントラストとは違う効果です。
オリジナル→白黒→明瞭(最大)という加工をしてみました↓
飛行機の重厚感は出てきました。さきほどよりも重々しい感じがします。飛行機が重いのは問題ですけど…そこは演出なので。尾翼の主張が強くなったので作業員に負けてないと思います。これで主役のバランスがそろいました。
もっと白黒をハッキリさせるために、さらに明瞭を加えます。中間的な階調を消すためにコントラストも上げます。ハイライトとシャドウで微調整しながら黒潰れや白飛びをおさえます。
完成品がこちら↓
最初に白黒にした画像↓
最初の画像では飛行機の存在感が薄いですが、完成品は重厚感がでました。左右の絵の重さ(濃度のバランス)も整ったと思います。
編集するときは少しづつ変化を加えてもいいですが、思いっきりやっちまった方が面白い結果になることもあります。今回は一度編集して保存してからさらに加工してます。本当はもっと派手にやりたかったのですが液晶画面で見るならこのくらいでもいいかなと。
今回は硬いイメージにしましたが、これが正解というものではありません。淡いイメージにしてノスタルジックな演出するのもアリです。
こんな感じとか↓
その作品を『どう見せたいのか』を意識して加工すると写真が面白くなります。
モノクロは味があっていいです。
見る人に何を感じて欲しいのか考えて味付けすると、自分だけの作品ができあがります。
写真を加工する意味
カラーで撮れる画像をモノクロにする意味ってなんでしょうね。
モノクロってなんかいい
こう思うのは見る人の感想です。撮る人もこれでいいんだけど、モノクロにする意味を考えてみると、モノクロ写真の面白みが広がるかもしれません。もちろん理屈抜きで楽しむのもアリだと思います。
前回の記事で紹介したモノクロ写真は、実はすべてカラーで撮影しています。撮影した後でモノクロ加工しています。
まれに編集や加工は邪道なんて聞くこともありますが、写真は料理と同じで素材の味を活かした調理をすることで美味しく仕上げることができます。塩のないおにぎりは美味しくないじゃないですか。写真も同じです。調理の仕方によって、より美味しい写真ができます。というか、色は人間の脳が加工して作っていますから。
色調や色のあるなしの変化は、見る人に与える印象を操作できます。伝えたいことが伝わりやすい演出をすることは、とても重要です。
これ、好きな人に気持ちを伝えるのと同じです。
「あなたが好きです」と言っただけでは伝わらないことってありますよね。だから髪型を整え、服装を整え、プレゼントを用意したりして演出します。気持ちを伝えるための演出ですね。
写真の加工も伝えるための演出です。
写真の演出のおもしろいところは、無言で訴えることができることです。影像だけでいかに伝えるか、がおもしろい。うまく伝わらないことも多いですけどね。
ちなみに上のハトの糞の写真のオリジナルはこちら↓
白黒とカラーではインパクトが違いますよね。(こんなインパクトいらない?)
さいごに
昔、F1レーサーはどんな影像を見ているのか実験したデータを見たことがあります。スピードを出しているときは、カラーに見えているのは中央のごくわずかな領域しかないそうです。そうしないと脳の処理速度が追いつかないんですね。
実は私達も視界の全域をカラー画像で捕らえてないそうです。カラーで見ているのは中央の領域だけで、その外側の端のほうはモノクロらしいです。重要でない像は脳が自動的にモノクロ処理しているんですね。
余計な色は無いほうがいいのかもしれません。色は脳に負担を与えますから。
そう考えるとモノクロ写真は脳にやさしいのかもしれませんね。
それではまた。