労働者の当然の権利であるはずの有給休暇が取得できない人が多いです。特に日本は。
わたしもかつては有休が取れず毎年時効で20日消滅していました。
今年度は完全に消化できたので取り組んだことなどを書きます。
有給休暇の仕組み
まずは簡単に有休の仕組みを説明しますね。
有休は法律で決められた休みです。
有休を正確に言うと「年次有給休暇」といいます。
「年次」なので1年単位で管理されます。
「有給」なので給与が有る(支払われる)休みです。仕事を休んでもお金がもらえるんです。素敵です。
年次有給休暇は「有休」「有給」「年休」など、いろいろな略し方で呼ばれますが、すべて同じ意味です。法的に略し方のルールがないため、会社によって(あるいは社内でも)いろいろな呼び方がされています。
有休は国が国民の健康を考えて、かつ収入の不安がないようにと決めた休みです。
法律では日本国憲法に以下の文があります。
第27条の2項
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
日本国憲法
「法律でこれを定める」の「法律」が労働基準法です。労働基準法では年次有給休暇についての定めがあります。
(年次有給休暇)
第三九条 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
さて、有休に絡む言葉はちょっと聞き慣れないかもしれません。ここで「付与」「消化」「時効」について簡単に説明しますね。
付与
付与とは、年に1回会社が労基法に従い従業員に有休を与えることです。
付与(有休がもらえる)のタイミングは会社によって違います。
少しややこしいのですが、最初に付与する日は雇入れから6ヶ月経過後としているので4月1日入社の人は10月1日が最初の付与日となります。2回目も10月1日です。10月ってなんだか半端な月ですね。中途入社の人さらに別の月になります。
これでは管理がたいへんなので全員4月1日に付与(一斉付与)する会社もあります。一斉付与は労基法の基準より早く有休がもらえてお得です。
また、会社によっては入社した時点で5日付与して6ヶ月後に残りを付与(分割付与)するケースもあります。入社初日から有休があると嬉しいですね。
このように労基法の基準よりも労働者に有利な条件であれば、変則的に有休を付与することは問題になりません。
消化
消化とは有休を使うことです。
一般的には「取る」「取った」という言い方が多いですね。
時効
年間で消化しきれなかった有休は次の年へ繰り越せます。ただし繰り越せるのは翌年まで。付与された有休は2年間の期限があるということです。
2年経っても消化できなかった場合、その有休は消えてなくなります。これを時効(消滅時効)と呼びます。
時効と同じタイミングで新しい年度の有休が付与されます。
長年勤務している人で有休を1日も使わない人は、20日の時効と20日の付与を繰り返します。繰り返し分と合わせて常に有給を40日持っている人は多いでしょう。毎年ほぼ1ヶ月分の有休をタダで捨てるなんてもったいないですね。
有給休暇の条件
有休が付与される条件は以下の2点。
- 雇入れの日から6ヶ月経過していること
- その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
この条件はあくまでも最低条件です。
「付与」でも書きましたが、雇入れ日から6ヶ月以内に与えても問題ありません。
有給休暇の日数
有休の日数は雇用形態(フルタイムかパートタイムか)や勤務日数によって変わります。詳しくは以下を参考に。
フルタイムの場合
短時間勤務(パートタイム)の場合
年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省より
「時効」で書きましたが、消化できなかった有休は翌年まで繰り越せます。
有休の買い取りはできない
時効までに消化しきれなかった有休は会社で買い取ってほしいと思う人もいるでしょう。しかし、
有休の買い取りはできません。
一方で、消化できなかった有休日数分のお金を払うことはできます。これは法律でも禁止されていません。
言葉遊びみたいですが、「買い取る」はできないけれど「払う」だけならできるんです。
つまり、お金で有休を「消化したことにする」のはできないけれど「消化できなかたった分のお金を払う」のは可能ということです。
労基法で定められた権利をゴニョゴニョいじらずにお金を払うだけなら会社の自由ですから。
さて、消化できなかった有休はお金で返ってくる。かと思うと意外とそうもいかなくて現実的には難しい問題です。払うだけなら違法ではないんですけどね。
有休は心身の疲労を癒やすのが目的であり、労働者に与えられた権利です。これにお金を払う仕組みができてしまうと、お金のために休まない人もでてきそうです。これでは本末転倒です。
なので退職時に残った有休を清算する以外に有休にお金を払う会社は少ないと思います。ちなみに退職の清算も厳密には「買い取り」ではありません。ただお金を払うだけです。一般的にはお金を払うよりも残った有休を消化してから退職とするケースが多いと思います。
有休が取れない理由
有休は国から与えられた権利です。この権利を行使するのに理由は不要です。法定休日(一般的には日曜日)に休むのに理由なんてありませんよね。それと同じです。
有休の申請書に事由欄がある会社もありますが、本来は不要な項目です。あえて書くのなら「私用のため」で十分。「旅行のため」なんて書かなくていいんですよ。
しかし自由に休めるハズなのに、休めない人が多いのが現実です。その大きな理由は以下の3点だと思います。
- まわりに迷惑をかける
- 自分の仕事が滞る
- 上司、同僚が理解してくれない
心当たりありませんか?
ちなみに、自由に休めるとは言っても、業務の正常な運営に支障がある日は休めません。常識の範囲で考えればわかると思います。
まわりに迷惑をかける?
自分が休むことで、まわりの人に迷惑をかけてしまうと考える人は多いです。日曜日や祝日にみんなが一斉に休むのなら気にならないのに、自分だけが休む日は気になるんですね。
まわりの人への気遣いができる人ほどこんな発想になりそうです。
自分の仕事が滞る?
自分がいないと仕事がまわらないと考える人も多いです。人に仕事が付いているパターンですね。
そういう職場もあるでしょう。仕事の代役がいないとこういう事態になります。
上司、同僚が理解してくれない
「休むのはいいけど、その仕事どうすんの?」みたいな。
有休を取ろうとすると難癖を付けてくる上司や同僚がいる職場もあるでしょう。
最悪ですね。会社、辞めましょう。
というのは簡単ですが、なかなかそうもいきません。
私もかつては上記3点の理由で有休を消化できませんでした。
しかし今年度は考え方を改めて有休を完全に消化しました。
私が有休を完全に消化できた背景
有休は自分の権利です。権利の行使は自分で行います。会社が「明日は有休にしなさい」とは言えないんです。
ハッキリ言いますが、有休が取れないのは自分の責任です。
これは今まで有休の消化ができなかった自分の率直な感想です。有休の消化をして感じたことです。
本来、自分の責任で自分の権利を行使しなければいけない事を会社や他人のせいにしているだけだったんです。(もちろんダメな会社もありますけどね)
実際に有休を消化しようとすると先述の問題がでてきます。
- まわりに迷惑をかける
- 自分の仕事が滞る
- 上司、同僚が理解してくれない
私もこう思っていましたが、これは幻想でした。私の場合。
まわりの迷惑はお互い様
まわりに迷惑をかけると思っている人は、誰かが有休を取ったら自分も迷惑だと考えるのでしょうか。そんなことありませんよね。それが正解です。
誰ひとりとして有休を使わない職場は、有休をとりにくいムードになります。そのムードを作っているのは自分でもあるのです。自分が率先して有休を取れば、まわりの人も有休を取りやすいムードになります。
留守の間に多少の迷惑はあるかもしれません。しかし全員が有休を順番に取れば、その迷惑も均等に分散されます。お互い様の精神があれば、まわりに迷惑という考え方はなくなります。
有休は権利だけれど、同じ職場の人の理解が必要なのも事実です。もしも有休が取りにくい職場なら、同僚(仲間)と相談してください。
有休が取りやすい環境になることを反対する人はいないでしょう。
仕事が滞るのはキャパを超えているから
自分の仕事が滞ると考えている人は、まあ納期がある仕事ならある程度はわかります。しかし1年365日、そんな日が続いているハズがないんです。もしもそうだとしたら、そもそもオーバーワークです。キャパを超えているんです。
例えば、有休は最大で20日付与されます。20日といえば勤務日数でいえばほぼ1ヶ月です。1年間のうち1ヶ月は有休で休めるんです。仕事の量はこの日数にあわせなければいけないんです。
つまり、休むヒマがないという人は、本来やるべきよりも多くの仕事を背負ってしまっているということです。
仕事を減らしてください。
上司から多くの仕事を背負わされているのなら「そこまでできません」と言ってください。
日曜日や祝日も休まず働きますか?
正月もゴールデンウィークも働きますか?
さすがに日曜日や祝日は休みますよね。(シフト勤務なら話は別)
「今度の日曜日、出勤してくれ。金は払わん。」と言われたらなんて答えますか?
仕事が滞ると考えている人は、自分がやるべき仕事の量を見誤っているんです。有休は日曜日や祝日に休むのと同じです。(厳密には違うけれど)その感覚で仕事の量を調整しなければいけないんです。
有休を20日持っている人は、自分が働く期間は年間11ヶ月だと思ってください。この感覚が大事です。この感覚がないと仕事に追われて休めません。
年間スケジュールに有休予定日を入れましょう。繁忙期は休めないでしょうから閑散期は多めに入れて、年間の付与日数を消化する予定を立てましょう。
持っている有休の日数が少ない人は、病欠で使うことも考慮したうえでスケジュールを組みましょう。
上司、同僚も有休が嫌いなわけじゃない
法律云々言ったところで言うことを聞かない上司や同僚もいます。
しかし有休の消化ができないことを「良し」と考えている人は少ないと思います。
仕事に支障が出るとか、不在中のフォローが面倒とか、そういった理由で難癖を付けてくるのではないでしょうか。
なかには自分自身が有休の消化ができず、部下や同僚の有休をおもしろく思わない人もいるでしょう。そんな人に有効なのは、その人たちに有休を取ってもらうことです。先に休ませてあげてください。そのために出来ることが何かないか相談してください。先手必勝です。お先にどうぞです。
自分だけが休むのではなく、みんなが順番に休むにはどうすれば良いか、みんなで考えるんです。
本来は管理者がやることですが、管理者も万能ではありません。
「やってくれない」という待ちの姿勢では問題は解消されないんです。
ぜひみんなで解決して、有休が取りやすい職場を作ってください。
有休を消化して変わったこと
私が有休をすべて消化できた理由はここに書いた通りです。
休むことで誰かに迷惑がかかるという考えを捨てました。その代わり誰かが休むときは喜んで協力します。いうほど大変ではなかったです。風邪で突然休まれるよりはるかに負担は少ないです。
仕事が滞ることもありませんでした。繁忙期は休めませんが、時期を考えて、休める月は4日でも5日でも休みました。そういうものだと割り切って休みました。
有休を順調に消化していくと、職場の雰囲気も「そういうものだ」と変わってきます。それが正常な状態なんです。
いまは有休の消化ができない人の方が恥ずかしいムードです。仕事の管理ができてないということですから。
おかげで仕事の量の感覚も正常になりました。
以前は徹夜で働いていたこともありました。アホですね。
いまはほぼ定時で帰っています。
当たり前のことなんですけどね。
この当たり前のことをやってこなかったのは、他でもない自分でした。
「どうせ休めない」と決め込んで、見えない壁を自分が勝手に作っていたんです。
さいごに
会社はなにもやってくれないと文句を言っても始まりません。
自分の権利は自分で行使する。
それが当たり前という風土を自分で作る。
そんな感覚が大事なのだと思います。
綺麗事かもしれません。うちの会社じゃ絶対ムリと感じる人もいるでしょう。どうしようもない会社も世の中にはありますからね(この記事台無し)
ただ、有休が取れない原因は自分の中にあるのかもしれません。そんな意識を持ってもらえたら嬉しいです。
それではまた。
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