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一円玉を「拾う」と「拾わない」は、どちらが得か

投稿日:2016年8月21日 更新日:

地面に一円玉が落ちています。この一円玉、拾いますか?

拾えば得をすると考える人もいれば、拾うと損をすると考える人もいます。

なかなかややこしい問題です。

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拾ったほうが得

一円玉を拾えば確実に現金が手に入ります。1円の儲けです。

(警察に届けるというのは置いといて)

専業主婦をしている人の中には、こういう確実な現金の動きに敏感な人は多いと思います。広告を見て1円でも安いスーパーに買いに行くとか。多少遠くても。

1円でも安く買えれば、お財布の現金の減りを確実に抑えられます。そのスーパーが自転車で30分かかるような遠くでも、行けば確実に現金の減りは抑えられます。専業主婦は収入を増やす手立てがないから支出を抑えようと考えるのは当然です。(アフィリエイトやればとか言わないで)

1円の節約が10円の節約になり、100円、千円と膨らんで行きます。確実に現金が蓄積されます。

労力を惜しまず確実に現金の確保をする

これをここでは『主婦目線』と呼んでみますね。

もちろん、資産運用などを上手にこなす専業主婦もいますが、それを言ってると話がまとまらないので勘弁してください。

拾うと損をする

一円玉を拾うと損をする。こう考える人もいます。

一円玉を拾うために消費するエネルギーや時間、これらのコストが1円以上の場合、拾うと損をします。1円以上使って1円を得るのだから、損をするというのはもっともな理屈です。

一円玉を拾わない人は、損はしないけど、得もしません。お金は手に入らないから。

この考え方だと、30分もかけて遠くのスーパーに行くことは滅多にないでしょう。30分のコストに見合うだけの安売りでなければ損です。近所のスーパーで済ませた方が時間の節約になります。タイムイズマネー!

コスト計算をしたうえで利益があるか考える

これをここでは『ビジネスマン目線』と呼んでみます。

もちろん、ビジネスマンでも利益のことなんてまったく考えない人もいますが、それを言ってると以下同文。

アクティビティ・ベースド・コスティング

アクティビティ・ベースド・コスティング(活動基準原価計算)というコスト管理の考え方があります。噛み砕いていえば、物の製造などで、発生する原価があいまいな活動(アクティビティ)を算出してコストのムダをなくそうというもの。

例えば製品Aの資料のコピーにかかる労務費とか。資料がなければ製品Aは完成しません。だからコピーにかかる人件費も、製品Aのコストとして計算しなければ正確な利益は解りません。まあぶっちゃけ細かすぎて面倒くさい手法です。

さて、「一円玉を拾う」というアクティビティをコスト計算するとどうなるでしょう。ここでは単純に時間の浪費だけで考えてみます。

「一円玉を拾う」「財布を出す」「財布に入れる」という動作にかかる時間は何秒でしょう。(アクティビティ・ベースド・コスティングって、こんな細かい計算したりするんですよ)

ここでは一円玉を拾う時間を5秒としてみます。

で、5秒の労務費を計算してみます。

例えば労務費を時給900円で換算してみますね。パートのイメージです。厳密には社会保険料や労働保険料なども加味したいところですが計算が複雑になるので単純にいきます。

時給900円を秒単位に換算すると1秒で0.25円です。5秒では1.25円ですね。

5秒で1.25円稼げる人が同じ時間で1円しか得られなかったら損ですね。0.25円のマイナスです。これじゃ拾わない方が良いのかも。時給900円以上稼ぐ人はさらに損をしそうです。

秒速で10億円稼ぐ人は、1億円でも拾わないでしょうね。

ビジネスマン目線で考えると、こんな風な損得勘定をしてしまうことがあります。ここまで計算するかわからないけど、アクティビティ・ベースド・コスティングを無視してると、商品は売れてるのに何故か会社の利益が上がらないなんてことになりかねません。

だから計算は大事です。

コスト計算の意識の違い

自分の稼ぎ(例として時給900円)から原価計算をした結果、一円玉を拾うのは割に合わない結果となりました。

では本当に一円玉は拾うべきではないのでしょうか?

なんかちょっとモヤっとします。

一円玉を拾うためにかかるコストが、一円以上を得られるコストに置き換えられるのならば、拾わないほうが確実に得です。

でも、置き換える利益がそもそも存在しないのであれば、損はしないけれど得もしません。拾えば確実に1円儲かるのに。

損を嫌って得を逃す。そんな風にも見えます。

アクティビティ・ベースド・コスティングのような原価計算をしていると、こういった勘違いをしそうです。

一円玉を拾う代わりに1円以上を得られるのであれば、拾わなくてもいいんです。でもそうでなければ、得を逃しているだけです。

もっともらしい原価計算に惑わされて得を逃すくらいなら、確実な現金の確保を目指す主婦目線の活動のほうが、間違いなく利益の確保ができそうです。

このあたりの違いは、サラリーマンの夫と専業主婦の妻との間のコスト意識の違いの原因になりそうです。

コスト意識の視点はどこにあるか

損を嫌って計算ばかりしてる人は、どこかで得を逃していかもしれません。同じパターンで管理会計で失敗する会社もあるようです。計算だけではうまくいかないこともあります。

引き換えとなる利益があるのなら、どちらが得か天秤にかけて慎重になるのも良いです。でも引き換えとなる利益がないのなら、30分かけて遠くのスーパーに買い物に行く主婦の方が結果的にお金持ちになる気がします。

休日の日数が日本一、残業ゼロ、報連相禁止で有名な未来工業株式会社の創業者である山田昭男氏の著書「日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり”」に書かれていますが、未来工業にはコピー機は1台しかないそうです。1枚のコピーにかかるコストは大きそう。アクティビティ・ベースド・コスティングで考えたらありえないです。でもこの未来工業って儲かってるんですよね。

損得は単純な勘定では計れないのかもしれません。

コピー機が1台だとコピーを取るのが面倒くさいからムダもなくなります。未来工業は損得勘定の視点が他と違うようですね。

一見得がなさそうなことでも、いろいろな角度から視点を変えて見ると、意外と大きな得が潜んでいるのかもしれません。

いや、そもそも、そんな計算をすること自体がムダなのかも。

さいごに

地面に落ちてる一円玉を見つけたときに、ちょっと思ったことを書きました。

拾ったら、損するんじゃないかな?と、計算高いつもりで、足が止まることがあります。

だから私はなかなか前に進めません。

勢いで「えいや!」で行動する人のほうが確実に前進してる気がします。そんな人がちょっと羨ましいです。

視点を変えなきゃいけないですね。

それではまた。

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ケンちです。約20年ほど写真業界にいました。いまはIT系企業で主にITとは関係ない仕事をしている普通の人です。