データ入力の仕事を担当していた頃の話です。手書きの原稿に読みにくい漢字が1つありました。正確な字が不明だったので、漢字に詳しい2人に聞きました。
このときの回答の違いから感じた知らない怖さなどを書きます。
意外な回答
私が判読できなかった漢字を、若手とベテランの2人のキーオペレーターに見せました。
若手とは言っても毎日漢字を扱う仕事をしているので、私よりもずっと漢字に詳しい人です。
私「ねぇ、ちょっとこの漢字わかるかな?」
若「はい。これはこの字ですよ」と、即答で紙に字を書きます。
ベ「う〜む…わからないなぁ…」と悩みます。
若手は即答したのにベテランは悩んでいます。
あれ?なんで?
「わからない」の真実
ベテランに聞きました。
若手が書いた字を見せて「この字じゃないの?」と。
するとベテランは「う〜ん…」と悩みながら字を書き始めました。
サラサラ…
サラサラ…
サラサラ…
サラサラ…
書き出した漢字は4つ。
若手が書いた字を含めると全部で5つ候補が出てきました。
「この5つの字のどれにも見えるんですよねぇ」と、判読できない理由を言いました。
私「なるほど…」
若「すご…」
知っているからこそ「わからない」
若手が即答できたのは他の漢字を知らなかったからでした。
知らないから選択肢が思い浮かばなかったわけですね。
そして、選択肢を持たないからこそ即答でコレ!と決めた。
いっぽう、ベテランは多くの漢字を知っていた。だから即答できずに悩みました。
そして悩んだあげく、判読不明という結論を出しました。
豊富な知識がある人ほど「わからない」という回答になってしまうケースがあるんですね。
知らない怖さ
今回の漢字とは違いますが、似てる漢字を2つほど。
穀 榖
杅 杆
似てますよね。
この2つの漢字は手書きだと判別が難しいです。でも一方の漢字しか知らなければ迷いません。たとえそれが間違いであっても気づきません。
知識が少ないと間違いに気づきようがないんですね。
漢字に限らず、こういうケースってありませんか?
浅い知識で物事を決めつけてしまう。そんな人がリアルにもネット上にもたくさんいますよね。
自分も同じ過ちをしているかもしれません。いや、たぶんしてる。
気づかないけど。気づきようがないけど。
これってちょっと怖いです。
さいごに
今回のケースを経験して、「わからない」と「知らない」の違いに注意しなければ、と思いました。
また、自分の判断力は自分の知識の範囲内の能力であること。自分よりも広い知識を持っている人は、また違う判断をする可能性があることも意識しておかなければ、とも思いました。
なにごとも短絡的に決めつけてはいけないですね。
謙虚に、謙虚に。
それではまた。