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プールで溺れている友達を笑いながら見ていた200人

投稿日:2016年8月11日 更新日:

A君は1人でプールのど真ん中。

たった1人で溺れていた。

私はその様子を笑って見ていた。

私の他にも200人ほどの人がいた。

みんな笑って見ていた。

Y君だけは違ったようだけど。



ちょっと変わってるA君

中学生のころの話。

A君は校内で有名な「いじられキャラ」だった。

特技の自慢をするけれど失敗ばかり。A君のそんなツッコミどころ満載のキャラをみんなでいじって遊んでた。

一歩間違えればイジメにも繋がりそうな、いじられぶり(いじりっぷり?)だったが、みんな彼のことが好きだった。もしも彼がイジメられてたら、多くの生徒が全力で助けるだろう。そんな関係が出来上がっていた。

変わり者

本人には自覚がなさそうだけれど、彼は明らかに変わり者だった。でもその様子は愛嬌があり、実際みんなから愛されていた。

水泳大会の日

クラス対抗の水泳大会の日、A君は200m自由形に出場した。

200m自由形は、ひとりで泳ぐ距離としては最長だ。技術と体力の勝負になるため、水泳大会の花形競技だった。

ちなみにA君は水泳部ではない。運動部ですらない。音楽部だ。

当然のようにスタートの時点からA君への声援(ヤジ、冷やかし含む、というかこっちがほとんど)が飛び交っていた。

「A君、頑張れー!」

「おまえ200mも泳げるのかよー!」

「なんでAがあそこにいるんだー!」

スタート台に立つだけで笑いを誘うA君。

泳ぐコースはど真ん中。そこでにこやかに手を振るA君。すでに1位を取ったような光景がさらに笑いを誘った。

A君以外のスタート台には水泳部や他の運動部の生徒のみ。種目からいえば、これがとうぜんなのだけれど、A君のクラスは200m自由形の勝負を捨てて笑いを取りにきたようだ。

予想外の選手の登場で賑わう中、スタートの合図が鳴った。

パーンッ!

泳ぎ方も変わっていたA君

各選手がいっせいに飛び込む。

A君も飛び込む。

飛び込みは普通だった。

しかし、泳ぎ方がおかしい。なにかぎこちない。

クロール…かなぁ…あれはクロールなのか?クロールってあんな泳ぎ方だったけ?

A君は、とりあえず泳いでいた。進んでいた。ターンもしてた。してたよ。クルッと。

他の選手がグングン先に進む中、A君は独特な泳法でマイペース(もしかしたら必死だったのかも)で進んでいた。

あまりにも不思議な泳ぎ方をしていたので、ギャラリーたちも大笑いしながら応援した。

たとえ泳ぎ方がヘンでも、彼は一生懸命泳いでいた。

だから笑いながらも応援した。

誰も気づかない

A君が150mほど泳いだところで、他の選手たちが全員ゴールした。

広いプールで泳いでいるのはA君ひとりだ。

笑いと声援がひときわ大きくなった。

さすがに疲れてきたのだろう、A君の進むスピードがかなり遅い。

先生からも大きな声援が飛んでいた。

場内の全員の目が、A君ひとりに向けられている。

そして声援は続く。

「A君、ほとんど進んでないぞー!」

「あと少し、頑張れー!」

他のクラスの生徒も一緒に応援していた。

学年のすべての生徒、すべての先生がA君の泳ぎを見守っていた。

200人が、A君の泳ぎを見ていた。

200人の目が、A君ひとりを見ていた。

それなのに、気付かなかった。

気づけなかった。

そのとき、すでに彼は泳いでなかった。泳げなかった。

沈まないように、必死にもがいていただけだったんだ。

A君は

200人に見守られて

大きな声援を受けながら

広いプールの真ん中で

ひとりきり

溺れていた

飛び込む男

タタタッ…パシャン!

プールサイドから勢い良く飛び込んだのは水泳部のY君だった。

「え?」

「なに?」

場内の声援がざわめきに変わった。

バシャン!

反対側のプールサイドから先生も飛び込んだ。

Y君は素晴らしい泳ぎを見せて、あっという間にA君に届き、そして必死にA君のカラダを支えた。水深は身長より深い。暴れるA君を支えるのは大変そうだった。

後から追いついた先生の助けをかりて、A君をプールサイドへ引き上げた。幸い、A君は無事だった。安堵のため息が漏れた。

他の生徒たちは混乱していた。

あっという間の出来事を、ただ見ているしかなかった。

誰かが言った。

「あんなのわかるかよ…」

私は思った。

『あんなのわからないよ…』

プールや海で注意したいこと

あの水泳大会を体験してから、プールや海や川で注意していることがある。

ふざけた(変な)泳ぎ方

溺れているフリ

死んだフリ

特に子供同士がプールで遊んでいるときに、たまに見かけるおフザケだけど、もしもそんなシーンを見かけたら、遊びでやっているのか、見極めるように注意している。

本当は溺れているのかもしれない。

ウソかホントか、その見分けは難しい。

気にしていたらキリがないけれど、少し気にしてみても良いと思う。

そして、もうひとつ注意したいこと。それは

浅瀬でも人は溺れる

ということ。

人は水深50cmでも溺死する

転んだ拍子に鼻から水を勢い良く吸い込むと、三半規管に水が入り、水平感覚を失う。こうなると、わずか50cmでも立ち上がることができずに溺れてしまう。これは過去に実際に起きた出来事。(ニュース記事探したけど見つからなかった…)

実は私も溺れた経験がある。その時の水深は80cmくらいだった。見事に上下がわからなくなり、ジタバタもがいているところを母親に引き上げてもらった。母親がそばにいなかったら死んでいたと思う。そしたらきっとニュースになるよね。

水深80cmで溺死

ネットでアホだのバカだの言われそうだけれど

慌てると上下がわからないんです。

水深とかぜんぜん関係なく溺れるんですよ。

さて、あなたは、水深50cm程度の浅瀬でジタバタしている人を見かけたときに、

助けようと思うだろうか?

ふざけて遊んでると思うだろうか?

溺れている人を見分けるのは難しい。これはA君が教えてくれた教訓だ。

浅瀬でも人は溺れる。これは体験から生まれた教訓だ。

さいごに

毎年毎年、水難事故が後を絶たない。

特に子供の事故は胸が痛むよ。ホントやだ。

自分の子供だけではなく、見える範囲の子供たちに少しでも異変を感じたら、気にかけてみたいと思う。

「あんなのわからないよ」と、後悔したくないから。

それではまた。

2016年08月13日追記

二次災害を防ぐために。

実際に溺れている人を発見してもひとりで助けようとしてはいけない。救助に向かった人が溺れてしまう二次災害も毎年のように起こっているから。

イザというときのために、以下のサイトは参考になると思う。

川でおぼれた人を助けるには | 体験・遊びナビゲーター

毎年発生する水難事故が少しでも減少することを祈ります。

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