知人に迷惑メールがきました。詐欺メールです。
損害金を払わないと家に行くと書かれていました。
身に覚えがない話でしたが、家に行くと書かれていると怖いですよね。
そのメールは私が見ても明らかに詐欺であることがわかりました。今回はその内容を紹介しますね。
同様の被害を受けているひとの参考になれば。
迷惑メールの内容
メールの件名は「実態調査完了通知」
なにかの実態を調査したようです。それが完了したと。
メールの本文は以下の通り。
下記案内をご確認ください。
【リンクアドレス】
カッコ()内には知人の情報が記載されています。間違いのない情報です。【リンクアドレス】には謎のリンクがありました。
差出人の名称はありません。←この時点でアウトなんですけどね。
【リンクアドレス】をクリックすると「支払調書」と書かれた画面が表示されました。
公的な文書のようです。あれ?「実態調査完了通知」じゃなかったの?
この支払調書の記載を要約すると、
こんなところでしょうか。
さてこの画面、いちばん上に文書の様式が書かれています。
支払調書の手続名も本物っぽいです。
きちんとした書式のようにみえますが、この支払調書はほんとうに存在するのでしょうか。
ちなみに私は支払調書に係る仕事をしていたので支払調書の様式についてはかなり詳しい部類に入ると思います。
とはいえ支払調書は毎年様式が更新されます。新しい様式が作られることもあります。
そこで今回の支払調書が本当に存在するのか調べてみました。
様式第8(第9条第1項 第60条の2関係)はあった…
まずは様式名について調べました。
支払調書の様式としては聞き覚えがありません。というか、支払調書はこういう様式名では管理されていません。
この謎の様式名「様式第8(第9条第1項 第60条の2関係)」をネットで検索しました。一発で出てきました。
様式第8 第9条第1項 第60条の2関係 電気通信事業の届出
総務省管轄の電気通信事業の届出の様式でした。
電気通信事業の届出って…支払調書ではないですね。
ということで「様式第8(第9条第1項 第60条の2関係)」は支払調書とは関係ない様式であることがわかりました。
もっともらしい様式名を記載して、公的な文書に見せかけたのでしょう。
続いて手続名の「贈与、余剰金の分配及び基金利息の支払調書」です。この支払調書は存在するのでしょうか?これはありそうな雰囲気です。
似たような名称の支払調書の見覚えがあります。
「贈与、余剰金の分配及び基金利息の支払調書」はあるのか?
「贈与、余剰金の分配及び基金利息の支払調書」
「支払調書」と書かれているので国税局が扱う法定調書の一種ですね。
ということで国税局のホームページで探しました。しかし、「贈与、余剰金の分配及び基金利息の支払調書」という手続名は存在しませんでした。
似ている手続名としては「配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書」があります。”金銭の分配”とい文字を取ってならべてみましょう。
配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書
上が詐欺の手続名
下が実在する手続名(一部文字を削除したもの)
きっとこの手続名をマネしたのでしょう。詐欺の手続名は剰余金を余剰金に変えたのはシャレでしょうか。余ったお金を配ってくれとも読めます。
支払調書は支払った記録です。支払ってもいない調書があること自体ナンセンスです。領収書みたいなものなので。(源泉徴収票の方が近いかな)
また、今回の支払調書には支払者の名称と住所がありませんでした。これでは誰が支払ったのかわかりません。
ということで結論です。
今回の「贈与、余剰金の分配及び基金利息の支払調書」という支払調書は存在しません。デタラメです。
Amazonギフト券で5000円の請求
今回の迷惑メールで特徴的だったのがお金の請求方法です。
画面の「振込依頼」ボタンを押して手続を進めていくと、最終的には損害金としてAmazonギフト券5000円を請求されます。
Amazonギフト券で5000円
ギフト券…
損害金を贈り物で払えと。
最近はクレジット払いのように追跡される方法を避けて、金券などで支払いの請求をする詐欺が増えているようです。
出会い系通信業者や債権回収会社を名乗る人から、損害賠償金をギフト券やプリペイドカードで支払いを求められたら詐欺だと思ってまず間違いありません。お金の回収をする業者がギフト券で支払いを求めるとか、ありえませんから。
プリペイドカードの購入を指示する詐欺業者にご注意!!-「購入したカードに記載された番号を教えて」は危ない!-(発表情報)_国民生活センター
Amazonギフト券を取り返す方法
もしもAmazonギフト券を送ってしまった場合、相手に使われる前に取り返す方法があります。それは、
自分のAmazonアカウントに登録する
Amazonギフト券は、一度アカウントに登録された番号は使えません。
詐欺業者よりも先に自分のアカウントに登録してしまえば譲渡を阻止できます。
Amazonのアカウントを持っていなければ、アカウントを持っている信頼できる人に協力してもらう方法もあります。
詐欺業者よりも先に登録しなければいけないので、成功率は不確かですが、この方法が一番早くて確実です。
ほかの方法としては、Amazonカスタマーサービスへメールで連絡する方法があります。しかしメールではいつ対応してくれるのかわからないため、確実性は先の方法より低いと思います。
Amazon.co.jp ヘルプ: Amazonギフト券を不正に取得しようとする詐欺にご注意ください
さいごに
いろいろな事情で不安な生活を送っている人は、こういった手口に騙されてしまうものです。しかも今回は住所まで知られていて、期日までに手数料を払わなければ家に行くと書かれていました。怖いですよね。
今回のような詐欺メールを受け取った場合、無視して問題ありません。メールに返信すると、その後もしつこくメールを送ってきます。電話をかけてくる業者もあります。なので無視が一番です。
詐欺かどうか不安なときは最寄りの国民生活センターに相談しましょう。
国民生活センターでは詐欺の情報などのデータベースを持っています。日々たくさんの問い合わせに対応しているのできっと的確な回答をしてくれるでしょう。(こちらとも仕事で関係がありましたが、たくさん相談があってびっくりします。)
受け取った迷惑メールは、迷惑メール情報センターに送ると今後の対策に役立ててくれるかも。
迷惑メール相談センター|情報提供のお願い|JADAC
私はたまたま官公庁のなかでもとりわけ詐欺と関わりが深い仕事をしていたので気づくことがいろいろありました。本当にたまたまです。知らなければどうしていいのか迷ってしまう人も多いと思います。
人を怖がらせるような詐欺はやめてほしいですね。
それではまた。